愛情が足りなかったのではありません

愛情が足りなかったから病気になったのではありません。

動物たちは充分に愛され、与えられた命を
それこそ懸命に、しかし淡々と生きています。
明日を絶望することなどせずに。

その姿に寄り添ってあげましょう。
私たちもお手伝いします。
# by petclinico | 2014-02-28 19:20 | その他

猫さん生活エンリッチメントの話10ー越えたい壁

先日、アメリカの獣医で動物行動学者のニールソン先生という方の講演会に
参加しました。猫さんのストレス管理と膀胱炎の関係についての
内容だったので、楽しみにしてでかけました。

前述の10年前のバフィントン先生の話と、それをもとにした最近の
一連の当ブログの内容と比べて、特に新しい話題はありませんでしたが
新しい栄養面の取り組みが、ストレス対策に有効であることなど参考になりました。

最新の知見により、猫さん生活エンリッチメントの取り組みに誤りがないことと
ますます重要であることが確認できてよかったです。やはり生活環境の整備と
栄養管理などを一括して行うのが効果的なようです。

そして、猫さんのための様々な取り組みを、お家の方に継続していただく
その責任の半分は私たち獣医にあるのだ、という言葉が印象にのこりました。

今回の取り組みのなかで皆さんと様々なお話をする中で、理論的に良いと
されていることの重要性と、それの必要性を知り実行することの間にある
超えなければならない壁も感じました。私自身の側にも。

それを超えることが、猫さんたちはじめ様々な家庭動物たちと私たちの
「健康」に大きくかかわってきそうです。
# by petclinico | 2014-02-24 22:27 | 猫さん生活エンリッチメント

猫さん生活エンリッチメントの話9ー物語としての猫さん、あるいは鏡として

物語としての猫さんだって?

ありのままの猫さんを大切にするんじゃなかったの?
といわれそうですか、今回は私の考えを書かせてください。
(ブログなのでご勘弁を。まったくもって独断に基づきますが。。。)

そう、猫さんは自然な存在で、生活環境の改善によりストレスのない
生活を目指そうというのが、最近書いてきたことでした。

しかし一方で、そのナチュラルさゆえに私たちにとって
どんな存在にもなってくれます。
それは時に、我が子であり、恋人であり、悲しみや喜びを共にする友人にも。

犬のような高い感情共有力により、私たちとコミュニケーションをとる訳では
ありませんが、ただそこに居るだけで私たちの感情を受け止めてくれます。
そこにはたしかに「物語」があるんじゃないか、と思うのです。

だけど猫さんは本当に受け止めてるのでしょうか、私たちを。
わかりません。猫さんは自然にあるがままに生きているだけです。
むしろ鏡のような存在なのかもしれません。

私たちをより良く映すためにも、鏡は曇りのない方がよいですよね。
# by petclinico | 2014-02-14 19:28 | 猫さん生活エンリッチメント

猫さん生活エンリッチメントの話8ー食事について3つのポイント

今回は生活エンリッチメントの観点から、猫さんの食事選びについて
3つの観点から考えたいと思います。

肉食性、ネオフィリア/ネオフォビア、それと病気です。


まず肉食性の話。ご存知の通り猫さんは純粋な肉食です。
肉を中心とした雑食であるワンちゃんや、本当に雑食な私たちとは異なります。

本来はネズミ等の小型げっ歯類を頭からまるかじり。時に小鳥もといった様子。
それを実現してあげれば良いのでしょうが、そうはいきませんね。
それに母親から狩りを習っていない猫は、ネズミを丸ごとは食べない可能性も。

私たちが食べる「鶏肉」では栄養をみたしません。
そこで本来必要な栄養を満たすにはキャットフードが一番
ということになりますがここで注意が。

市販されているドライタイプのフードはほとんどが「総合栄養食」
であるとは思います。しかし安価な物を中心に炭水化物(穀物)の
比率の高い物がおおいのです。猫さんには高タンパクの食事が必要です。


次に、ネオフィリア(新し物好き)とネオフォビア(新規恐怖症)の話。

猫さんたち肉食動物には、本来いろいろな物を食べたがる性質=ネオフィリアが
備わっています。そうして食物のバランスをとるようにしているのですね。

だから子猫にいろいろな物を与えれば食べます。しかしそれが過ぎると飽きやすく
本来食べるべきフードもなかなか食べない、すぐ他の物を欲しがる猫さんに
育ってしまう可能性があります。

一方、かたくなに同じフードしか食べず、他の物を食品と
認められない=ネオフォビアの猫さんもいます。

これにはいろいろな原因が考えられますが、発育期に穀物含有の多い
固定されたフードしか食べていない場合や、現在の生活環境に強いストレスが
かかっている場合が考えられます。

ここまでの話から考えると猫さんには、良質なフードを適度に変化を付けて
(ドライだったり缶だったり、そんなにコロコロ変えるのでなく)用意して
あげるのが良いようです。しかしそれだけでは充分でないケースも。


最後は、病気の予防/治療のための食事選びです。

最近のこのブログでは、生活環境によるストレスが影響を与える病気
について皆さんにお伝えしてきました、膀胱炎や皮膚病、
便秘や肥満(糖尿病・肝臓病)などです。

しかしこれらの病気にはストレス以外に内科的、外科的な要因も
たくさんあります。それらを解決するのに治療用のフードが役に立つのです。

もちろん薬ではないので「効能」が保証されるわけではありませんが
食事の性質や栄養管理が独特で、繊細な猫さんだからこそ治療の補助として
食事選びが大切なのです。そしてその「効果」を見守ることも。
# by petclinico | 2014-02-11 13:11 | 猫さん生活エンリッチメント

猫さん生活エンリッチメントの話7ー私たちを超えた存在

猫さんが家具を引っ掻く、テーブルに乗る、隠れてしまって
姿がみえなくなる、あるいはトイレ以外の場所におしっこする。

これらは「問題行動」ですが「異常行動」ではありません。
どういうことかというと、上記の行動は
私たち生活する人間がこまる「問題行動」であり猫さんにとっては
正常な行動です。病気等による「異常行動」ではないのです。

しかし猫さんたちは私たちと共に暮らす存在です。いくら本能に根ざした
正常行動だからといって、すべて許されるわけでもありません。

「問題行動」の解決は繊細な問題を含み、個別の事情に応じた解決策が
はかられるべきなので、ここで解決法についての詳細は述べません。
動物病院にご相談ください。しかし原則があります。

対案と許容です。

家具ではなく引っ掻いてよい物を用意する、それも意味のある場所に。
のぼっても良い高い所を用意する、安心して隠れられ逃げ道もあり
私たちに分かる場所に寝床をつくる、などが対案です。

さらに不適切な排尿(マーキング)については、前回書いたトイレ対策や
猫さんのテリトリーに対する不安要素を軽減することが有効です。

そして猫さんたちの行動を可能な範囲で許容すること、これが重要です。
叩いたり、大きな声で叱って脅しても「問題行動」の解決にはつながりません。

猫さんはある意味、私たちを超えた存在なのだと思います。
猫さん生活エンリッチメントの話7ー私たちを超えた存在_b0138613_14185735.jpg



しかしすごい雪だな。
# by petclinico | 2014-02-08 14:19 | 猫さん生活エンリッチメント

湘南藤沢・鎌倉地域で診療している動物病院、ペットクリニック大橋の院長ブログです。“より良く、より長く”どうぶつ達と皆様の“暮らしの健康”を守るお手伝いをいたします。


by petclinico